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  • Vol.165
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  • 2025.4.4

新入社員の研修でこれだけは押さえたい!新人教育をする際の注意点

厚生労働省の調査によると、2023年3月卒業の大学新卒者の就職後3年以内の離職率は34.9%。Z世代にあたる約3割の新入社員が入社3年以内に離職しています(※参考1)。離職の理由として「仕事が自分に合わなかった」という理由が割合として最も高く、入社前と入社後のギャップを感じ、早期離職を決意する人が増えています。
こうした現状を踏まえ、新入社員の人たちに向けてどのような研修や配慮をするのがよいでしょうか?本記事では、新入社員の研修や教育の内容や担当者に必要な心構えなどを紹介します。

ストラテジック・デザイナー

T.M.

1.新入社員研修の実施状況と課題点

1.新入社員研修の実施状況と課題点

新入社員研修を実施している企業について、興味深いデータがあります。従業員が300名以下の中小企業での研修実施率は70%と、いずれも90%の実施率である大企業(91%)や中堅企業(94%)に比べて下がっています(※参考2)。

2024年版の中小企業白書によれば、日本の企業の99.7%は中小企業といわれる中、全体の約3割の企業で新入社員研修を行っていない結果となります。ではなぜ、中小企業はこれほど実施率が低いのでしょうか。

要因として考えられるのが、リソースの問題です。従業員数が少ないことに加え、業務時間を割いて新人教育の仕組みを構築できる部署や担当者を確保することが難しい点が考えられます。

近年では新人教育を内製するのではなく、外注する向きもあります。

労働政策研究・研修機構が公表した調査「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(※参考3)によると、中小企業の30%が社内研修の外部委託をしています。

さらに、従業員が9人以下の小規模な企業においては、外部委託率が25.3%なのに対し、従業員数が30〜99人の中小企業では35.4%が外部委託しているという調査データもあります。

2.新入社員に向けた研修でやっていること

2.新入社員に向けた研修でやっていること

2-1. 新入社員の研修方法

新入社員の研修には、人材育成における3つの柱とされるOJTやOff-JT、自己啓発を中心とした以下の方法が用いられるのが基本です。

  • ①座学・Off-JT(社内規則やビジネスマナー、業務知識を学ぶ)

  • ②実践研修(グループワークやロールプレイングによるトレーニング)

  • ③OJT(On the Job Training)


OJTを実施する際は、事前に新入社員が達成したい目標・ゴールを設定します。次にゴールから逆算する形でOJTの内容や計画を設定していきます。
OJTに限らず新人教育、人材育成の際に重要なのは、研修者の前に細かいステップを用意してあげることです。

もしあなたが研修を受ける立場にあったとします。入社当初に自分の想定を上回るはるかに高いレベルの課題が与えられたらどういう気持ちになるでしょうか?

きっと萎縮してしまうのではないでしょうか。最初から実現が難しい困難な壁を用意するのではなく、まずは少し足を上げれば登れるような段差を意識してあげるといいでしょう。
研修を受ける人に小さな成功体験を積んでもらうことで、自ら挑戦してみようという自主性を促していきます。

OJTの基本は、①Show(やってみせ)、②Tell(言って聞かせて)、③Do(してみせて)④Check(評価・追加指導)とされますが、
筆者はこれに加えて⑤encourage(励ます、ほめる)が現代においては重要なキーになると考えています。

なぜなら、ほめることで相手は「自分が認められている、肯定的に受け入れられている」と感じ、心理的安全性につながるからです。

しかし、闇雲にほめれば良いわけではありません。
研修を受ける人の心構えの項でも触れますが、日本人は往々にして「ほめる」のが苦手です。
普段から「compliment(お世辞)」を言う/言われるのが挨拶というくらいの欧米文化と比べ、日本では多くの人にとって日常生活で人を「ほめる力」を養う機会が少ないのです。

筆者は「ほめる力」と言いましたが、その人をきちんと「見ていない」と、的外れなほめ方となってしまい相手の心には響きません。適切に「ほめる」こともまたスキルなのです。

特にZ世代の新入社員の傾向として、心理的安全性やキャリアの安全性を重視します。「共感」や「寄り添い」は研修や教育をする上でキーとなることを忘れないでください。

2-2. 新人研修の定番内容

・ビジネスマナー

特に新卒社員向けの研修で多く取り入れられています。挨拶、敬語の使い方、電話対応、メール作成、名刺交換など、ビジネスパーソンとしてまず身につけておきたい作法をロールプレイングを交えて教えます。「報連相」についてもここで徹底しておかないと、後々業務に支障を来たす!なんてことにもなります。

・コンプライアンスの遵守

法令遵守や倫理観を理解しリスク管理意識を身につけてもらうことは、企業にとってのリスクヘッジでもあります。 特に機密情報や顧客情報の扱いに関しては徹底しないと企業全体にとっての大損失にもなるので、徹底したいところです。

・業界・企業理念・文化の理解

業界動向や業界における自社の立ち位置から新入社員に会社のPMVVの共有を通して、チームの目指す方向性や社会における使命、企業文化の基となる価値観がはっきりし、自分が担当する業務の目的や意義を理解することができます。また、組織の一員としてどう振る舞い、貢献していくかの軸も明確になります。

・商品・サービス理解

自社が扱う商品やサービスについて、実際にユーザーとして体験してもらうことを含めて深く学びます。

・ロジカルシンキング

ロジカルシンキング(論理的思考)は、ビジネスをする上で不可欠なスキルです。結論と論拠を明確にして、筋道を立てて物事を整理・説明できるように教育することが重要です。

2-3. 新入社員の研修や新人教育の失敗例

新入社員の研修を実施する際や、新人教育期間中の失敗について代表的な例を挙げると以下のようになります。

  • ・作業の手順や内容の背景や目的の説明がない

  • ・詰め込みすぎることによる置いてけぼり感

  • ・過度な期待によるプレッシャーと精神的に負担なってしまう

  • ・フィードバックやフォローアップなどの体制に不備がある

  • ・企業理念や価値観を伝えない

  • ・レクチャーをする人が威圧的で叱責してしまう


失敗例のほとんどが、指導側や受け入れる職場環境が原因です。
・新入社員を受け入れる体制が整っているのか?
・研修の段取りはもちろん、内容についても新入社員に寄り添った内容になっているか?
といったことを改めて見直してみることをおすすめします。

3.新入社員の研修で何よりも伝えるべきはこれ!新人教育の際の注意点

3.新入社員の研修で何よりも伝えるべきはこれ!新人教育の際の注意点

3-1. 企業の理念や価値観、ビジョンを伝える

先述した失敗例の中で、特にやってはいけないのが、企業理念や価値観に代表されるPMVV、つまりパーパス(貢献価値)、ミッション(使命)、ビジョン(中長期ビジョン)、バリュー(価値観)を伝えないことです。 PMVVを伝えないと、新入社員は自分の仕事の意味を理解できずに、ただ「作業員」化してしまいます。 これでは従業員エンゲージメントだけでなくモチベーション自体が下がり、早期離職の原因にもなりますので、PMVVは必ず研修で伝える内容に盛り込みましょう。
PMVVについて詳しく知りたい方は、ぜひインナーブランディングの記事を参考に。

3-2. 研修者の心構え

新入社員研修や新人教育を担当する側も、適切な指導を行うための心構えが必要です。
ここでは、これまで新入社員の教育を担当した筆者が大事にしている普段の心構えを紹介します。

・「教育」ではなく「共育」姿勢

「子どもに勉強させたかったら、親がまず勉強する姿勢を見せることだ」。これは先輩社員や新入社員に対しても言えるのではないかと思っています。教育者自身が学ぶことをせず、その生徒は果たして学ぶでしょうか?子どもは親が思う以上に親を見ているのと同じく、新入社員も上司や周囲を見ているのだということを忘れずにいたいものです。

・適切なフィードバック

フィードバック(以下、FB)をしないのは、テストをして採点結果を出さないのと同じです。ただし同時に、FBは一歩間違えると、単なる「非難」と受け取られかねません。新入社員がした判断や行動理由について伺った上でするようにしましょう。頭ごなしに叱りつけても相手は萎縮するだけです。また、FBは適切なタイミングですることで効果が高まります。また、後出しは厳禁です。新入社員がした行為に対して、できれば行為のすぐ後、少なくとも1、2日内にはFBするように私は努めています。人間は良くも悪くも忘れる生き物ですから、FBは鮮度が命だと思っておきましょう。

・1回叱ったら6回はほめる

日本人はほめるのが苦手と言われています。世界的にもかなり「ほめられない職場」にいます。間違った指導やほめ方は、相手の心に響きません。だからこそ、相手を「よく観察する」「気づく」力が求められるのです。実はこれは、エグゼクティブ・スピーチコーチ&コミュニケーション・ストラテジストである岡本純子さんから学んだことです。「ほめ方」や「話し方」で悩まれている方は、ぜひ岡本さんの著書(※参考4)を参考にしてみてください。

・新入社員が「失敗できる」「相談できる」仕組みづくり

新入社員にとって入社後はわからないことだらけです。この経験は研修を受ける側の誰しもが以前(何十年も前だったとしても)に経験済みの事柄ですが、やはり人は忘れてしまうもの。自分たちが入社した当時に抱えていた悩みと同等ではないまでも、共通した悩みもきっとあるはずです。新入社員が迷ったり、つまずいたときのセーフティーネットを用意することで、新入社員は”安心して”失敗することができ、それを学びに変え、迷ったときは相談してみようと思う仕組みづくりをするのです。いくら研修をしてみたところで、研修後のフォローアップの体制が不十分だと、新入社員たちの心は離れていってしまうでしょう。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか?
新入社員研修は、単に業務を教えるだけの場ではなく、企業理念や企業文化を理解し、従業員エンゲージメントを高める機会であることをご理解いただけたのではないでしょうか。

特に世代が異なる者同士が、研修者側や新入社員という立場になった場合には、より一層「歩み寄る」姿勢が求められます。

まずは、研修の目的を明確にし、新入社員がステップバイステップで成長できる仕組みを用意してあげることが重要です。
研修を実施する側も新入社員も共に成長し合える関係が築ければいいですね。

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