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  • Vol.163
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  • 2025.3.24

会議がスムーズに進む|ファシリテーションに必要な技術、役割とスキルアップの方法

あなたの会社で行われる会議は、ただの意見交換やおしゃべりになっていませんか?
せっかく会議やディスカッションなどの場や仕組みを設けても、活発な意見交換がされないと悩む声をよく聞きます。何回会議をしても何も進展しない、何も決まらずに時間だけが過ぎていく。こうした経験を誰しも一度はされたことがあるのではないでしょうか。うまく会議が運営されない原因はファシリテーションを導入していない、もしくは機能していないからかもしれません。議論の進行や合意形成を円滑に行うのがファシリテーターの役割なのですが、働き方の多様化等によりその重要性は増すばかりです。本記事では、ファシリテーションに必要なスキルやスキルアップのポイント、企業や組織にもたらすメリットについて解説します。

ストラテジック・デザイナー

T.M.

1.ファシリテーションが求められる背景

1.ファシリテーションが求められる背景

2025年3月に発表されたHR総研の「社内コミュニケーション」に関するアンケート結果(※参考1)によると、社内コミュニケーションに課題を抱えていると考える企業は、アンケート回答企業の6割を超えています。

社内コミュニケーションの一つとして会議やディスカッションを行う機会を設ける企業は少なくありません。しかし、「会議をしてもなかなか前に進まない」、「意見が出されずなかなか活性化しない」といった悩みが依然として聞かれます。

大きな要因の一つとされているのが、働き方の多様化です。
雇用形態や勤務形態、バックグラウンドの異なる人が一緒に働くことも珍しくなくなりつつあります。また、コロナ禍以降はリモートワークが普及しました。
国土交通省が実施した「令和5年度 テレワーク人口実態調査」(※参考2)によると、月1回から週4回テレワークを実施する人の割合は、令和4年度と比較して増加しています。また、同調査では、テレワークの継続意向についても調査されており、雇用型テレワーカーの約87%がテレワークの継続を希望しています。

より働き方が柔軟になっている反面、社内のコミュニケーションをどう図っていくのか?という課題に向き合う企業はこれまで以上に増えることが予想されます。
また、SNS等の媒体が発達したことにより、いわゆるフィルターバブル現象が生じて社会の利害がぶつかり合うようになったことで、コミュニケーションが取りづらくなっている現状も懸念されています。

そんな中、社内コミュニケーションの場として最も多く活用される会議の在り方を見直すことが今後一層求められるのではないでしょうか。

冒頭に触れましたように会議の課題としてよく聞かれるのが、
・会議がなかなか進まずに停滞してしまう
・会議中に一人だけが多く話してしまう
・いつもダラダラして長時間に及んでしまう
・なんのための会議なのか?がわからなくなってしまった
・会議中に参加者同士が衝突して喧嘩が勃発してしまった……
といった声です。

身に覚えのある方も多いのではないでしょうか。
実は、これらの課題はすべてファシリテーションによって解決できるのです。

2.ファシリテーション導入のメリット

2.ファシリテーション導入のメリット

ファシリテーションとは何か?よくある誤解

日本ファシリテーション協会(FAJ)によれば、ファシリテーション(facilitation)とは、人々の活動が容易にできるよう支援し、物事が円滑に進むよう舵取りをすることを指します(※参考3)。
ファシリテーションについて、よくある誤解の一つが、「人が集まる場所さえつくればいい!」という考えです。
先述したように、異なるバックグラウンドや価値観の持ち主が一つの組織に集まっている現代、「場だけ設ければいい」という考えでは、人はぶつかり合うだけだったりします。 特にファシリテーターが不在であったり、段取りや仕切りが悪いことによって、参加したメンバーに以下のような感情を喚起してしまう場面が増えています。
「できるだけ発言したくない」
「二度と参加したくない」
こうした感情はしまいには、組織やチームに対するモチベーションや帰属意識を薄めてしまうことにつながりかねないので放っておいてはいけません。

ファシリテーション導入のメリット

ファシリテーションを導入することで得られる主なメリットについてご紹介します。

  • ・会議の生産性向上

    →時間が無駄にならず、短時間で結論を出しやすくなります

  • ・社員の意見が反映されやすくなる

    →一部の人だけでなく、全員が発言しやすい環境をつくります

  • ・チームワークの強化

    →互いの考えを尊重しながら話し合うことで、一体感が生まれます

  • ・創造的なアイデアが生まれる

    →意見を引き出すことで、今までにない新しい発想が出てきます

3.ファシリテーターに求められる役割とスキルアップのポイント

ファシリテーターに求められる役割とスキル

ファシリテーターの主な役割は、会議や議論を円滑に進め、参加者が効果的にコミュニケーションを取れるようにサポートすることですが、そのためにはどういったスキルが求められるのでしょうか。
会議を円滑に進めるために、ファシリテーターは、以下の4つのスキルを適切に活用しています。

  • ①共有:会議の目的や議題を明確にし、情報を整理する力

  • ②発散:多様な意見を引き出し、自由な発想を促す力

  • ③収束:出された意見を整理し、優先順位を決める力

  • ④決定:最終的な結論を導き、具体的なアクションにつなげるようまとめる力

3.ファシリテーターに求められる役割とスキルアップのポイント

①共有(Sharing)

会議の目的や議題を明確にし、参加者全員に情報を共有する力で、場のデザインスキルともいわれます。

具体的なアプローチ

  • ・目的の明確化

    →会議の冒頭で「この会議の目的は○○です」と明確に伝える

  • ・議題の整理

    →事前にアジェンダを共有し、どのような流れで進めるかを示す

  • ・ルールの設定

    →「時間配分」「発言ルール」「意思決定の方法」などを説明し、円滑な議論を支援する

  • ・参加者の期待値を揃える

    →「本日のゴールは○○を決めることです」と、最終的な到達点を確認する

②発散(Divergence)

多様な意見を引き出し、自由な発想を促す力で、対人関係スキルが試されます。

具体的なアプローチ

  • ・心理的安全性の確保

    →「どんな意見ども歓迎です」と伝え、意見を否定せずに受け止める

  • ・ブレインストーミングの活用

    →「アイデアの数を優先し、批判なしで出していきましょう」といったルールを設ける

  • ・問いかけを工夫する

    →「もし予算が無制限だったら?」「競合がやるとしたら?」など、発想を広げる質問を投げかける

  • ・アイデアの可視化

    →ホワイトボードや付箋を活用し、出た意見を整理しながら視覚化することで、新たな発想を生み出しやすくする

③ 収束(Convergence)

発散したアイデアや意見を整理し、議論を収束させる力を指し、物事を構造化するスキルが求められます。

具体的なアプローチ

  • ・カテゴリー分け

    →「似たアイデアをグループ化しましょう」など、共通点を見つけて整理する

  • ・優先順位付け

    →「影響度が高いものはどれか?」といった基準を設け、重要度を評価する

  • ・メリット・デメリット分析

    →出たアイデアについて「実現可能性」「コスト」「リスク」などの観点で比較する

  • ・合意形成の促進

    →「この中で最も良い選択肢はどれか?」と問いかけ、最適な選択を探る

④ 決定(Decision Making)

収束した意見をもとに、最終的な結論を導き、アクションにつなげる力です。合意形成するスキルがこれに該当します。

具体的なアプローチ

  • ・意思決定の方法を決める

    →「多数決で決める」「コンセンサス(全員の合意)を取る」など、決定の仕方を事前に明確にする

  • ・結論の確認

    →「では、この方針で進めることで皆さん合意できますか?」と確認する

  • ・具体的なアクションプランの設定

    →「誰が、いつまでに、何をするのか」を明確にし、次のステップを決める

  • ・役割分担の明確化

    →「Aさんは○○の担当、Bさんは○○を進める」と責任範囲を明確にする

ファシリテーションを効果的にスキルアップさせる6つのポイント

ファシリテーターを育成する上で普段から意識しておきたいことや伸ばしていきたい能力をまとめると、以下の6つのスキルアップを普段から意識することで、ファシリテーション力の向上につながります。

3.ファシリテーターに求められる役割とスキルアップのポイント

①コミュニケーションスキル

・明確で簡潔な言葉で説明する能力
・参加者の発言を適切に要約し、整理するスキル
・傾聴力を発揮し、発言者の意図を正しく理解する

②問いかけのスキル

・適切な質問を投げかけ、議論を深める
・「なぜ?」や「どのように?」といった質問で具体的な意見を引き出す

③感情のコントロール

・冷静に状況を判断し、感情に流されずに進行する
・参加者の感情を読み取り、適切に対応する

④論理的思考

・議論を整理し、論理的に構造化する
・意見の矛盾点や不足点を見抜き、適切に指摘する

⑤柔軟な対応力

・予期しない問題が発生した際に、臨機応変に対応する
・予定通り進まない場合でも、最適な方法を見つけて対応する

⑥中立的な立場を保つスキル

・特定の意見や立場に偏らず、公平な態度で議論を進める
・すべての意見を尊重し、適切に取り上げる

ファシリテーターを務める際に心がけたいこと

ファシリテーターを急に任されることになった!といったケースも今後増えていくことでしょう。 そこで、気をつけておきたい点をまとめてみました。
たとえファシリテーターとしてではなく、一人の参加者として会議に参加される際にもこれらのポイントを理解することで、進行の妨げとなる行為を自分がしていないか?進行に協力できているか?を測る指標ともなるので、ぜひ参考にされてください。

  • ・不意打ちNG

    →事前に「皆さんに必ず発言する機会を与えます」と伝えておくことで、発言までに準備する余裕も与えることになり、メンバーへの議論へのコミット具合も高まります。

  • ・全員参加感の醸成

    →意見を持っていたにも関わらず、議論に貢献する機会を与えられなかった参加者は強いフラストレーションを感じるそうです。必ず参加者一人ひとりに何かしらの意見や感想を言ってもらう機会を設けることで、「自分も参加しているんだ!」と思ってもらうことができます。

  • ・緊張緩和

    →議論への参加、発言には少なからず緊張が伴うもの。特に初対面・初参加者は緊張するものなので、彼らの緊張をほぐして「輪に入れてあげる」よう努める必要があります。緊張は心理的安全性の妨げになります。

  • ・場のムードをつくる・調整する

    →闊達な議論が交わされるようにするには、少なからずファシリテーター自身のムードが影響します。ムードメーカーになる必要はありませんが、その場のムードをつくるという意識は大事かもしれません。

  • ・立場の違いにまずは受け止め、最後まで聞く

    →上司だからと部下の発言をさえぎってしまうなどのケースがありますが、そこは我慢。せっかくの発言を最後まで聞くことで、心理的安全性は高まります。

  • ・しっかりとしたリアクション(※特にオンラインでは注意)

    →明るい表情、声のトーンを上げて、リアクションを取ってあげると相手も「発言して良かった!」と思ってもらい、次回以降の発言する心理的ハードルが下がります。特にリモートでの環境は相手の表情が読み取りづらかったりするので、少しオーバーなくらいのリアクションを意識するといいかもしれません。

ファシリテーターを育成する手段

今後、ファシリテーターを社内で育成したい!と考える企業の方に向けて、ファシリテーターは育成できるのか?という点についてご紹介します。

  • ・研修やワークショップの実施

    →ファシリテーターに限らず、プロから直接学べる機会を持つのが習得においては一番の近道です。ファシリテーションはどうしても実践を経て習得できる分野なので、直接学ぶ機会や経験を得られることは大きくスキルアップにつながることでしょう。

  • ・実践の場の提供(ロールプレイでもOK)

    →企業の場合は、「必要に迫られて」といった状況の人も多いかもしれません。最初から上手くいくことはないかもしれませんが、実践の場を得られたというのはファシリテーションを身につける上でとても貴重な機会だとも捉えられます。

  • ・フィードバックを基にした改善

    →実践した際には、ぜひ自身で振り返る機会を設けることをお勧めします。もし可能であれば、参加者からフィードバックがもらえると、自分自身では気遣った部分や改善するヒントが得られるでしょう。会議が終わったら「どうだった?」と一言感想をいただける関係性があるといいですね。

これらの取り組みにより、社内でファシリテーターを育成し、会議の質を向上させることができるので、まずできることからやってみてはいかがでしょうか。

3.ファシリテーターに求められる役割とスキルアップのポイント

4.ファシリテーションは準備が9割!

ファシリテーションの成功は準備で9割方決まります。というのも、議論はライブですので、どう展開するかはわかりません。時に、発言したい人だけが発言してしまったり、参加者同士が喧嘩腰になってしまったりすることもあるからです。そういった際にこそ、ファシリテーション力が試されます。

こういった場合は、こうしよう!というイメトレをする、事前にメンバー各自に与える発言時間を伝えておこう!といったことを議論する前にしておくことをお勧めします。

また、ファシリテーターは参加者に対してさまざまな気遣いを求められます。誰かの肩を持つわけではなく、常に中立でいることが重要です。議論が迷走しそうになった際には、話者の話はもちろんのこと、話者のメンツをつぶさないようにうまく意見を整理してまとめてあげることも時に必要なことでしょう。また、発言に消極的なメンバーの意見を引き出してあげるような試みもあっていいかもしれません。

だからこそ、事前の準備が会議や議論の成功を左右するのです。
あらかじめ、各参加メンバーについてできるだけ知る必要もあるかもしれませんし、どう進行していけばいいかの段取りも事前に考えられることです。あらかじめ段取りを決めておき、議論がはじまったら、全体を見つつ、発言者の意見や考えを汲み取ることに集中できる環境を用意しておくことが大事なのではないでしょうか。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
ファシリテーションは、社内コミュニケーションの場である会議の生産性を高め、チームのコミュニケーションを円滑にするために不可欠なスキルです。ファシリテーションを導入することで、組織全体の意思決定プロセスが改善され、議論をより効果的にすることができます。まずは、ファシリテーションの基本を理解し、実践することから始めてみてはいかがでしょうか。

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