MENUMENU
  • Vol.160
  • BRANDING
  • 2025.3.11

採用市場の変化に対応|中小企業が取り組むべき採用ブランディングとは

近年、少子高齢化による労働力不足や、働き方・価値観の多様化が進んでいます。企業の採用において、特にZ世代やアルファ世代は、従来の採用メッセージが響きにくくなっているのが現状です。 求職者は給与や待遇だけでなく、企業のビジョン、社会貢献度、職場環境といった「働く意義」を重視する傾向が強まっています。また、デジタル技術の発展により、企業と求職者の接点が多様化しており、どのように自社の魅力を発信するかを悩む企業も少なくありません。 こうした背景のもと、中小企業が企業の価値観にフィットする人材を確保し、競争力を高めるためには「採用ブランディング戦略」が不可欠です。本記事では、採用ブランディングの重要性やその実践方法について解説します。

デザインリード

Y.T.

1.採用ブランディングが求められる背景

1.採用ブランディングが求められる背景

・売り手市場の傾向が強まる

リクルートワークス研究所の「ワークス大卒求人倍率調査」によると、大卒求人倍率は年々上昇傾向にあります。
2023年卒: 1.58倍
2024年卒: 1.71倍
2025年卒: 1.75倍
この倍率は、学生1人あたりの求人数を示し、1.0を超えると売り手市場とされます。2025年卒では1.75倍まで上昇しており、企業間での人材獲得競争が激化していることがわかります。

・中小企業の採用競争が激化

企業規模別に見ると、特に中小企業において売り手市場の傾向が顕著です。
・従業員300人未満の企業: 6.50倍
・従業員5,000人以上の大企業: 0.34倍

出典:リクルートワークス研究所「ワークス大卒求人倍率調査(2025年卒)」
https://www.works-i.com/surveys/item/240425_recruitment_saiyo_ratio.pdf

・求職者の価値観の変化

従来の採用活動では、給与や福利厚生といった条件面が重視されていました。しかし、近年の求職者は以下のような要素を重視する傾向があります。
1.企業のミッションやビジョン(社会貢献や経営理念)
2.職場環境の透明性(社風、働きやすさ)
3.キャリア成長の機会(研修制度や成長支援)
4.ワークライフバランス(柔軟な働き方、リモートワーク)

このデータからもわかるように、中小企業では特に人材確保が難しくなっており、また求職者の価値観の変化に伴い採用ブランディングの重要性が増しています。 求職者は 「働きがい」や「企業との価値観の一致」 を重要視しており、企業のビジョンや文化をいかにリアルに伝えるかが求められています。

2.採用ブランディングのメリット

少子高齢化に伴い、中小企業の人材確保は今後ますます厳しくなると予想されます。従来のように求人媒体へ広告を出稿し、大量のエントリーを獲得する方法では、求職者の価値観が多様化する中で、採用の成功率はさらに低下していくことが予想されます。これからは、単にエントリー数を増やすのではなく、企業のビジョンや文化に共感する人材をいかに引き寄せるかが、採用成功の鍵となります。

2.採用ブランディングのメリット

採用ブランディングとは

企業が採用市場においてブランド力を高めるための戦略的な活動です。単に人員を補充するのではなく、企業のビジョンや文化に共感し、長く活躍できる人材を引き寄せることを目的としています。適切な採用ブランディングを行うことで、自社に合った人材の応募が増え、定着率が向上し、結果的に企業の成長につながります。

採用ブランディングの具体的なメリット

1. 企業認知度の向上

企業が積極的に情報発信を行うことで、求職者だけでなく、取引先や業界関係者など幅広い層へ認知を広げることができます。特に、採用ページやオウンドメディアを活用して、企業のビジョン・文化・働く環境を具体的に伝えるコンテンツを充実させることで、単なる求人情報に留まらず、企業ブランディングそのものを強化する効果も期待できます。

2.求める人材からの応募増加

従来の求人広告では、幅広い層に情報を届けられる一方で、企業との価値観が合わない求職者からの応募も増えてしまうという課題があります。採用ブランディングを強化することで、企業のビジョンや求める人物像が明確になり、「自分に合う企業かどうか」を求職者自身が判断しやすくなるため、結果としてマッチング率が向上します。

3.採用コストの削減

適切な採用ブランディングを行うことで、求人媒体の掲載費用やエージェントへの依存度を抑えつつ、よりターゲットに合った人材を惹きつけることが可能になります。また、企業文化にフィットした人材を採用できるため、早期離職のリスクが減り、再採用にかかるコストを削減できる点も大きなメリットです。

4.従業員のモチベーション向上

採用ブランディングは、新しい人材を惹きつけるだけでなく、既存の従業員のエンゲージメントを高める効果もあります。企業の価値観やミッションを明確にし、それを外部に発信することで、従業員自身も「自分がこの企業で働く意義」を再確認でき、ロイヤリティの向上や離職率の低減につながります。

5.競合他社との差別化

求職者は複数の企業を比較しながら転職先を検討するため、企業の独自性を明確に伝えることが重要です。 他社と似たような採用メッセージでは埋もれてしまうため、「自社でしか得られない経験」「業界の中での強み」「働く環境のユニークさ」などを打ち出すことがポイントになります。

採用ブランディングは、求職者や転職希望者だけでなく、既存の従業員にも企業の価値を再認識させ、ロイヤリティを高める「インナーブランディング」の効果があります。経営理念やビジョンを明確に発信することで、社内の共通意識を醸成し、従業員のエンゲージメント向上にもつながります。 このように、採用ブランディングは企業にフォットした人材の確保と企業文化の強化を同時に実現する施策であり、長期的な企業成長において不可欠な戦略と言えるでしょう。

3.採用ブランディング戦略の設計手順

これまで感覚的に施策を実施していた企業にとって、採用ブランディングの導入はターゲットに対するアプローチの精度を大幅に向上させる機会となります。
採用ブランディングの鉄則は「一貫性と継続性」です。特に採用活動においては、候補者との接点、タッチポイントが多様化している今、ブレのないメッセージを発信し続けることが重要です。

3.採用ブランディング戦略の設計手順

1. 体制づくり

採用ブランディングに取り組む企業の多くが軽視しがちなフェーズですが、最初にブランディングを運用する体制を整備することが成功の鍵です。
・採用ブランディングチームの結成
・採用担当の中にブランド責任者を設置
・メッセージの一貫性を確保するための方針策定

2. 採用の目的整理と求める人材像の明確化

なぜ人材を採用するのか、その目的を整理します。その上で、求める人物像を具体的に定義しましょう。
・採用の目的を整理し、企業の成長戦略に沿った人材計画を立てる。
・求める人物像をスキル面だけでなく、企業文化や方向性に合致する観点からも明確にする。
・Must要件とWant要件を分け、チーム全体で共通認識を持つ。

3. 自社の強みや特徴を分析・効果的なメッセージやキャッチコピーの作成

ターゲットに想起させたい「企業の魅力」を整理し、採用市場の中での競争優位性を明確にします。

・事業内容の洗い出し
提供するサービスや製品、主要とする事業の領域、業界内でのポジショニングを明確にします。

・企業文化の把握
社風、価値観、経営理念を整理し、求職者が「この企業で働きたい」と思えるポイントを言語化します。

・人事制度の確認
福利厚生、キャリアパス、評価制度、教育・研修プログラムなど、従業員の成長を支援する仕組みを明確にします。

・同業他社との比較
競合と比較し、自社が持つ独自の強み(技術力、社風、働き方の柔軟性など)を明確にします。

キャッチコピーは、企業のビジョン、事業内容、社風などの要素を踏まえ、簡潔かつ魅力的に設計することが重要です。また、社員インタビューを活用し、リアルな声を反映させることで、求職者の共感を得やすくなります。 情報を整理した後は、伝えたいメッセージを簡潔で分かりやすい形に落とし込み、効果的に発信していきましょう。

4. コミュニケーションの設計

企業が求職者に向けて戦略的に情報を発信し、関心を高めるため、効果的なコミュニケーション方法を検討します。従来の採用活動が「求人を出し、応募を待つ」受動的なものであったのに対し、「企業の魅力を積極的に発信し、適切な人材を引き寄せる」能動的なアプローチを重視します。 求職者との接点を強化するために、採用ブランディングにおけるコミュニケーション設計は、大きく以下の3つの段階に分けて考えることができます。

・母集団形成:認知・興味喚起

まずは求職者に自社の存在を知ってもらい、そして興味を持ってもらう必要があります。単に認知されるだけではなく、エントリーにつながる施策が重要となります。 効果的な母集団形成のためには、ターゲットとなる求職者がどのような情報に興味を持ち、どの媒体を利用しているのかを理解し、それに応じた戦略的な情報発信が求められます。
例)
・SNSを活用した企業文化や社員のストーリー発信
・採用サイトでの魅力的なコンテンツ配信
・業界イベントやセミナーでのプレゼンス向上

・説明会・選考:動機形成

求職者が選考中に競合他社と比較する中で、自社を選ぶ理由を明確に伝えることが不可欠です。企業の価値観や成長機会を具体的に示し、求職者の不安を解消することで、選考途中の離脱を防ぐことができます。
例)
・採用サイトでの詳細な企業・職種情報の提供
・説明会での具体的なキャリアパスや成長環境の紹介
・面接での的確なフィードバックとフォローアップ

・テンション:不安払拭

内定者が必ず自社に入社してくれるとは限りません。入社までの期間に他社と比較したり、不安を感じたりすることも多いため、承諾率を高めるためには積極的なフォローが不可欠です。企業側が一方的に情報を提供するのではなく、内定者と双方向のコミュニケーションを取ることで、安心感を与え、企業へのエンゲージメントを高めることが重要です。
例)
・定期的なコミュニケーション(メール・電話・面談)
・内定者向け懇談会や交流イベントの実施
・キャリアパスや成長機会の明確化と共有
・迅速かつ丁寧な質問対応

5. 効果測定と改善

採用ブランディングは 継続的な改善が鍵となります。一度施策を実施しただけでは、求める結果を得ることは難しく、データに基づいた分析と調整が不可欠です。効果測定の指標(KPI設定)を設定、ポイントを明確にし、PDCAサイクルを回しながら採用活動を最適化していきましょう。

補足:メディアの特性を活かしたコミュニケーション

各メディアの特性を活かして採用ブランディングを行うことで、求職者に対して効果的にアプローチし、一貫性のある魅力的な情報発信が可能になります。今回は、各メディアの特性についてご紹介します。

オウンドメディア

・自由度が高い
  自社の理念や文化を深く掘り下げて発信可能。
・更新頻度が重要
 定期的な情報更新で鮮度を保ち、潜在求職者の興味を引きつける。
・共感マッチング
 企業文化を掘り下げることができるため、求職者が共感しやすく、ミスマッチを防ぐ効果がある。

SNS/動画プラットフォーム(YouTubeなど)

・即時性と拡散力
 若年層へのリーチに効果的で、双方向のコミュニケーションが可能。
・視覚的訴求力
 InstagramやTikTokでは写真や動画で企業文化を視覚的に伝えられる。
・親近感の向上
 動画コンテンツは、社員の日常をリアルに伝えられ、求職者との距離感を縮める効果がある

採用媒体

情報が固定化しやすいため、鮮度維持が課題。
・求人情報の明確化
 事業内容や募集要項を詳細に伝える場。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
人材確保に課題を感じている採用担当者や経営者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、企業の成長に欠かせない採用ブランディングについてご紹介しました。
これは、単なる人材募集ではなく、自社に合った人材を長期的に確保し、競争力を高めるための重要な戦略です。
また、採用ブランディングは、従業員の満足度や定着率の向上にも寄与します。企業のビジョンや文化を明確にすることで、求職者とのミスマッチを防ぎ、組織の安定化にもつながります。求職者だけでなく、既存の従業員にも企業の理念を浸透させ、一体感やエンゲージメントの向上にも貢献します。

企業の未来を見据え、持続的な成長を実現するために、採用ブランディングに取り組んでみてはいかがでしょうか?

TAGS

RECENT POSTS

TRENDING

INDEX

MORE FOR YOU

今日もあなたに気づきと発見がありますように

画面を回転してください | 株式会社BOEL

画面を回転してください