近年、多くの企業が環境問題への対応をブランド戦略の一つとして取り入れたいと考えています。
一方で会社として何から取り組めば良いのかと悩んでいる担当者の方も多いのではないでしょうか。
なので今回は、環境問題をテクノロジーの力で解決する「クリーンテック(Cleantech)」から糸口を探ってみましょう。
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まず、みなさんは「クリーンテック」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。 クリーンテックは「グリーンテック」とも呼ばれており、環境(Clean)と技術(Technology)を掛け合わせた造語で、再生不能資源※1※1石油、天然ガスといった使えばいずれ枯渇してしまう化石燃料を利用しない、または利用する量を抑えたサービスやプロダクト(製品)のことをいいます。
例えば、今までは石油で自動車を動かし、プラスチックが製造されてきましたが、 これからは太陽光や風、地熱など自然の力を利用したエネルギーで車を動かし、バイオマス※2※2動植物などから生まれた生物資源の総称でプラスチックや電気を生み出す技術を原料にプラスチックを作るなど再生可能なエネルギーに置き換えていく動きが活発化していくと考えられています。
2027年までの市場規模が483億6000万ドル(約5兆2712億円)に達すると予測されていますので、環境問題の取り組みに関心がある企業の担当者の方は目が離せないトピックではないでしょうか。
※1 石油、天然ガスといった使えばいずれ枯渇してしまう化石燃料
※2 動植物などから生まれた生物資源の総称でプラスチックや電気を生み出す技術
ここからは、環境問題に対して積極的に取り組む姿勢で有名なスターバックスを参考事例として考えていきましょう。
企業ブランドを語る上で教科書のような存在のスターバックスですが、環境問題への取り組みとして、いち早くストローをプラスチックから代替素材として紙や生分解性プラスチック※3※3自然界に存在する微生物の働きで最終的にCO2と水にまで完全に分解されるプラスチック に変更したことは、世の中に大きなインパクトを与えました。
多くの企業が「目の前の経営に手一杯で環境問題にまでは」と二の足を踏んでいる状況の中で、紙のストローが実現した背景には何があったのでしょうか。
※3 自然界に存在する微生物の働きで最終的にCO2と水にまで完全に分解されるプラスチック
実は、ワシントン州シアトルでは2018年からレストランでプラスチック製のストローやナイフを提供することを禁止する条例が施行されました。もちろんシアトルに本社を置くスターバックスもこの規制の対象となったのですが、スターバックスはこれをトリガーとして、規制を受けない世界中にある2万8千以上の店舗でも紙のストローの導入を決定しました。
ここでお伝えしたいのは、スターバックスが単に紙のストローを使う地球に優しい企業ということではなく、環境への配慮を含め、社会の一員として行動する事が企業に求められているということです。
スターバックスは子どもから大人までの幅広い年齢層から支持を集める企業ですが、その人気の秘訣はスタッフのホスピタリティだけでなく、社会に対して誠実に向き合う姿勢にもあるということです。 未来を見据えた企業戦略とも言えますが、少し視点を変えてみると賢い企業戦略によるブランディングの構築とも言えます。
環境への取り組みが企業ブランドにおいて大切ということをお伝えしてきましたが、ここからは国内のクリーンテック市場で活躍している企業のサービスやプロダクトを参考にその糸口を探っていきたいと思います。
ゼロボードはCO2排出量の算出・可視化クラウドサービス「zeroboard」を展開しています。 具体的には、サプライチェーンや商品ごとのCO2排出量をデータ連携で把握し、企業活動によって排出されるCO2の総量を見える化するというものです。脱炭素化※4※4地球温暖化の原因となる代表的な温室効果ガスである二酸化炭素の排出量をゼロにしようという取り組み経営に貢献できる点で上場企業などからも注目を集めています。
会社名:株式会社ゼロボード(Zeroboard Inc.)
設 立:2021年8月24日
https://zeroboard.jp/
※4 地球温暖化の原因となる代表的な温室効果ガスである二酸化炭素の排出量をゼロにしようという取り組み
アスエネは再生可能エネルギーを調達するコンサルティングサービスの「アスエネ」と温室効果ガス排出量管理クラウドサービス「アスゼロ」を提供する企業です。 アスエネは、ブロックチェーン※5※5暗号技術によって取引履歴を1本の鎖のようにつなぎ、データを正確に維持する技術を活用してユーザーが太陽光や風力などの再生可能エネルギーの調達方法を選択できるようにするもので、企業の環境問題に対する取り組みの推進やエネルギーの地産地消に貢献しています。一方のアスゼロは、AIなどのテクノロジーを活用して温室効果ガス排出量の分析や省エネ法などの報告を効率化するサービスです。
会社名:アスエネ株式会社
設 立:2019年10月
https://earthene.com/corporate
※5 暗号技術によって取引履歴を1本の鎖のようにつなぎ、データを正確に維持する技術
シノプスは、AIが過去の販売実績や天候等による来店客数の変化をもとに需要を予測して、適切な数量だけ自動発注する小売業向けシステム「sinops」を提供しています。今回の協業によって、小売店で得られる需要予測値をメーカーや卸と共有し、食品流通全体の最適化と、食品ロスの削減や物流分野での温室効果ガス削減を目指しています。
会社名:伊藤忠商事
設 立:1949年12月
https://www.itochu.co.jp/ja/index.html
会社名:シノプス
設 立:1987年10月
https://www.sinops.jp/
京都大学発のスタートアップ企業であるOPTMASSは、ビルの窓ガラスが電力を生み、各フロアで活動する人々に電気を届けることができる「透明太陽電池」を開発しています。
この研究成果を応用し、高層ビルの窓ガラスを透明太陽電池にすることで、景観を損なうことなくビルで発電できるようになります。
発電効率などの課題は少なくないですが、仮に全ての窓ガラスを透明太陽電池に置き換えることが出来ればエネルギー問題は飛躍的に前進するのではないでしょうか。
会社名:株式会社OPTMASS
設 立:2021年10月
https://optmass.jp/
東京大学発スタートアップ企業のアルガルバイオは、微細藻類の培養技術から企業にコンサルティングを行っています。藻類は植物と同様に、光合成によって二酸化炭素を吸収するので、カーボンニュートラル※6※6温室効果ガスの排出量が森林や植物などの吸収量を超えないようにし、実質温室効果ガスの排出がゼロになることを目的とした取り組みの観点からも世界的に注目されています。
会社名:株式会社アルガルバイオ
設 立:2018年3月
https://algalbio.co.jp/
※6 温室効果ガスの排出量が森林や植物などの吸収量を超えないようにし、実質温室効果ガスの排出がゼロになることを目的とした取り組み
今回は企業が環境問題に取り組む際の糸口としてクリーンテックを紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
環境保護・社会貢献と聞くと、企業として何から取り組めば良いのかと迷ってしまいますよね。
しかし、企業を含めて私たち一人ひとりが地球温暖化を防止するために環境問題を考え、取り組みを実行していく責任があることは誰しもが気づいているのではないでしょうか。
自社だけで取り組むことが難しい場合は、今回紹介した企業のサービスや製品を検討してみるのも一つの方法ではないかと思います。
いずれにしても、社会の大きな潮流として、企業の環境問題に対する取り組みの度合いが企業価値を評価する指標の一つとなってきていると考えられます。
逆の見方をすると、積極的に環境問題に取り組み、その姿を社会に発信し続けていけば企業のファンを増やし、ブランド価値を高めることが出来るのではないでしょうか。
そう簡単に最初の一歩が踏み出せない取り組みかもしれないですが、取り組んだ先に企業の価値向上が待っているのは確かなので踏み出してみましょう。
今日もあなたに気づきと発見がありますように
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