「アジャイルってなに?」と聞かれたら、みなさんは何と答えますか。アジャイルがどんな開発手法か、ご存知の方は多いと思います。しかし、いざ実践してみると「想像したように実行できない」と躓いてしまうことが多いのではないでしょうか。躓いて改めて考える、アジャイルって何だろう? 今回は、そのヒントとなるような書籍『みんなでアジャイル』について、ご紹介します。
DEVELOPER
N.U.
アジャイルを一種の開発手法と理解されている方は多いのではないでしょうか。しかしこの捉え方は、特定のフレームワークに従い、思考を停止させる危険性を孕んでいます。
一方、アジャイルを「マインドセット」と定義することで、誰かと衝突した際の言い訳に使うこともできます。
『みんなでアジャイル 変化に対応できる顧客中心組織のつくりかた(Matt LeMay 著、吉羽 龍太郎、永瀬 美穂、原田 騎郎、有野 雅士 訳、及川 卓也 まえがき)』(以下、本書)では、アジャイルをムーブメントとして捉えることが、手法とマインドセットの両方を変化させ、仕事を進めるうえでの自分の責任をより理解できるようになる、と解説しています。
本書6ページより「手法、マインドセット、ムーブメントとしてのアジャイル」
前章で、”アジャイルを手法と捉えることは、フレームワークに従うことの危険性を孕んでいる”と紹介しました。具体的にどういうことなのか、本書から抜粋して解説します。
アジャイルが現代の組織が抱える問題に対してどんなときでも使える革命的な解決方法だとしたら、それはすごく魅力的だ。だが、アジャイルの用語を使い、表面的にプラクティスを適用するだけでは、フレームワークの罠にはまることが保証されるようなものだ。「なぜ」と問わなければならない。アジャイルで意味のある変化を得るためには、人はグループで働かせ、自分たちのニーズやゴールを理解させ、そして現在のやり方がどうゴールの達成を阻んでいるかを理解させなければいけない。(本書25ページより抜粋)
アジャイルを意義あるものにするには、ゴールと課題を設定し、現状に対して常に問い続ける姿勢が大切なのです。
本書ではアジャイルの3原則として以下のように定義しています。
アジャイルは効率や速さを向上させるための運用改善策とみなされることが多いですが、本当に大切な視点は顧客のためにどう協力しあうか、という視点です。
チーム内での情報共有手段を振り返ったとき、ツールを介した非同期コミュニケーションが、いちばんのコミュニケーション手段になっていませんか。
リモートワークなど物理的に距離がある場合だけでなく、メンバーが同じ場所にいたとしても、ツールに頼ったコミュニケーションになりがち、というチームは多いと思います。
こういったコミュニケーションの取り方は一見すると簡単に思えますが、積もり積もって時間と注意力を浪費してしまいます。
分断されたメンバー同士が横断的に集まり、一つのチームとして協力する姿勢が重要です。
アジャイルは、不確実で急速に変化する世界の現実を認識するだけでなく、不確実性を乗りこなすのに役立つ実際の構造を提供します。
今回本書を読んでもっとも感じたのは、どれだけ問い続けることができるかでアジャイルが成功するかどうか決まるということです。
2週間スパンでタスクを区切り、短時間のデイリーミーティングを実施しても、本質を問うことから逃げてしまっては、仕事をしているパフォーマンスに過ぎないのだと感じました。
アクションや、チームが良い方向に進んでいる兆候、悪い方向に進んでいる兆候の具体例が紹介されているため、手順書として参考になると思います。
アジャイルを実践したい方は、ぜひ読んでみてください。
参考:『みんなでアジャイル 変化に対応できる顧客中心組織のつくりかた』
Matt LeMay 著、吉羽 龍太郎、永瀬 美穂、原田 騎郎、有野 雅士 訳、及川 卓也 まえがき
オライリージャパン 発行
今日もあなたに気づきと発見がありますように
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