MENUMENU
  • Vol.128
  • BRANDING
  • 2021.9.10

DX時代×温故知新=ブランディングの新しい視点

最近、ふと感じることがあります。 ブランディングについて、多くの考え方や定義があるような気がするのです。 学者・マーケッター・広告会社・CI 企業、立場によっても違います。

PLANNER

Y.T.

一昔前のブランド論

一昔前のブランド論

1970年~1980年代にかけて、大量生産・大量消費の時代の中、それまで、あまり語られることがなかった「マーケティング」という概念が日本にも入ってきました。自分が育った広告業界においても、いわゆる、科学するマーケティング論やメディア論が語られ、21世紀を迎える頃には、社会学・経済学におけるブランディング論が主流となり、その過程で、デジタル技術の発達もあり、その流れは加速していったように思います。
このように、社会が複雑になり、情報伝達手段も多様化・多元化している中、ブランドの「伝え方」にも大きな変化が起きていることは言うまでもありません。
デジタル社会が到来し、人々の暮らしや接触メディアも大きく変化してきました。また、コロナの猛威によって、違った意味での生活様式の変化を受け入れざるを得ない状況になっています。

以前のブランドコミュニケーションの主流は、テレビや新聞を中心としたマスメディアを使うことでした。メディアに自社ブランドの広告を出稿し、大量消費の促進を図っていました。
クリエイティブ面でも、有名人気タレントを起用し、より目立つように、世界観をコントロールしていたのです。そして、メディアに多くの予算を投下し、ノイズレベルに至るべく、大量出稿を競い合っていました。
露出頻度と認知度をアップしていく中で、商品やサービスのブランディングを図ろうとしていたのです。いわゆる「リーチ&フリークエンシー」です。

その後、時代の変遷によって、商品やサービスの多様化・機能の多面化があり、社会環境としても、価格低下によるデフレスパイラル等もあり、マーケティングやブランディングの戦略にも変化が生じてきました。
デジタルの浸透と言う側面もあり、マス広告の効果も低下し、生活者の意識に変化が生じるようになってきたと言えるでしょう。
マスメディア離れ・小売り離れ・無駄買い離れなど、生活者の行動も、大きく変化してきたことは言うまでもありません。

デジタル化によって何が起きたか?

その結果、何が起きたのか?

デジタルの利点でもある「効率性」が重視されるようになったのだと思います。
予実管理を徹底し、在庫を減らし、省力化を図り、無駄を省く。
こうした、今まではコントロールしきれなかった領域での「数値化」が可能になってきました。経営視点に立った時、まことに喜ばしい現象であり、待ちに待った時代到来でしょう。
また、AI導入によって、人がやらないですむ仕事や、人間にはできない作業も可能になってきています。これも効率性向上に大きく寄与してきています。素晴らしいことですよね。
しかし、ちょっと待ってください。
効率性を否定するつもりはありませんが、忘れてはならないことがあるのです。

それは、「数値化できない情緒的な魅力」です。

人は美しいものに接すると感動します。美味しいものを食べた時には満足します。人に優しくされた時には、喜びや嬉しさを感じます。こうしたことって数値化できるでしょうか?

ブランドを構成する要素を教科書的にあげると、「機能的価値」「情緒的価値」「体験体感的価値」と言われています。その中での「情緒的価値」。これは数値化できるでしょうか?
いいね!の数や、星の数など、確かに数値データ比較はできるかも知れません。
しかし、例えば、100万人が認める5ツ星の2,000円ランチと、子供の頃に母親が握ってくれたお握り。どちらが美味しいでしょうか?どちらの価値が高いのでしょうか?
答えを求めること自体、陳腐的だと私は思うのです。

私が申し上げたいことは、数値化されたデータは、あくまでもデータであり、ブランドが有する価値とは、やはり、その商品・サービスの「本質的な魅力を価値化すること」であると言うこと。

江戸時代のブランド論

ここで閑話休題。
デジタルデータもなく、マスメディアもなかった時代を思い浮かべてみましょう。
そうですね?江戸時代の日本橋界隈をイメージしてみてください。
当然のことながら、ブランディングなどと言う言葉もありませんでした。
しかし、本能的に、今で言う、ブランディングをしていたはずなんです。
きっと、商人は、商品そのものに目を向けて、魅力を探っていたことでしょう。
どこに価値があり、誰に向けて?どうやって発信すべきなのか?を考えていたはずです。
例えば、江戸の金魚さんは、♪金魚~え、金魚♪と歌いながら、鈴を鳴り響かせていました。こうした行為を通じて、「金魚屋さんブランド」を確立していったはずです。町の住民は、この声と鈴の音を聞いて、金魚屋さんが来たことを認知する。まさにブランドエクスペリエンスです。
また、井戸端会議等は、魚や野菜、モノの売り買いをするコミュニティーであるとともに、今で言うSNSのリアル版であり、クチコミ発信基地だったはずです。
きっと100年以上も続く老舗の店は、そうやって、歴史と文化をブランド化させながら、今の時代へと継承していったのだと思います。海苔や醤油、天ぷら屋さんに郷土料理店も。

だからこそ「温故知新」

つまり、ブランディングの本質そのものは変わっていないのです。
ブランディングとは、その商品やサービスの、どこに一番の魅力があって、どのようなベネフィットをユーザーに届けられるのか?そこに尽きるのです。

見せ方や伝え方、付加価値や装飾、そういった部分は時代によって変わりますが、ブランドの持つ価値や本質はそう簡単に変わらないのです。
つまり、あまり難しく考えない方がいいのです。

迷った時や困った時、よく「原点に返ると良い」と言います。
パソコンが止まってしまった時、専門領域の人でさえ、一度、再起動してみましょうと言っています。ブランディングについても、色々な考え方や施策が出揃って、混迷している時こそ、原点に戻って、シンプルに考えてみる必要があると思います。

人生、迷ったら再起動。

この言葉に従って、温故知新してみませんか?
「故きを温ねて新しきを知る」とは、どんなに時代が変化しようと、美しいと感じる情緒は変わらないから、色々な手法が飛び交っている世の中だけど、もう一度、本質に立ち返ってみようということなのです。

「人の本質や情緒的な魅力とは何か?」を前提に考え
できることなら、「温故知新」から、もう一歩、進んで「温故創新」

古きを探り、新たな方向性を作っていきましょう!

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