MENUMENU
  • Vol.122
  • BRANDING
  • 2021.2.1

ブランド戦略の策定に便利なフレームワーク

昨今「ブランディング」「ブランド戦略」などといった言葉をあちらこちらでよく耳にするようになったと感じる方が多いのではないでしょうか。その背景にあるのは、各市場の成熟による競争が激化してきている社会状況や環境の変化が要因ではないかと考えています。特に直近ではCOVID-19の影響で消費者行動が変化してきており、競争を生き残る強いブランド作りに必要なブランド戦略の重要性が見直されつつあります。 成功するブランディングには、的確なブランド戦略が欠かせません。今回はブランド戦略の必要性とともに、戦略の策定に役に立つフレームワークを紹介します。

FRONT END ENGINEER

K.K.

ブランド戦略とは

ブランド戦略とは

消費者に選ばれ続けるためには、ブランド戦略を確立する必要があります。
しかし、ブランド戦略という言葉自体なんとなく分かるようで分からないという方も多いのではないでしょうか

ブランド戦略とは目指すべきブランドを決め、様々な施策を実行することでブランド価値を高め、市場で優位性を獲得するための戦略です。
消費者は企業の雰囲気やロゴ、商品やサービスを総合的に捉えて何らかの印象を持ちます。これがブランドです。数ある商品の中で消費者に選ばれるかどうかは、商品のパフォーマンスや価格に加えて、そのブランドの価値が影響します。よって、自分たちのブランドはどんなものなのか、何を提供できるのか、何を達成しようとするのかを意図した通りにブランドイメージを消費者に正しく理解してもらい、価値を感じもらうために重要なのがブランド戦略です。

ブランド戦略のメリットとは

ブランド戦略を作成し、実行することで認知度が増え、消費者からも信頼されるようになります。また、ブランドイメージの浸透につながり、より多くの顧客のファン化を狙えます。それでは具体的なメリットをいくつかご紹介します。

差別化

自社の商品やサービスの価値を消費者に認知させることができ、効果的に差別化を行えます。
ブランドコンセプトを定めて施策を持続すれば、消費者はブランドを見ただけで自動的にその商品やサービスの特性を連想することができるようになり、差別化を図れます。例えば、牛丼チェーンの吉野家はどの店舗でも「うまい、やすい、はやい」と私たちが認識しているように、消費者に価値を認知されて初めて差別化が実現されたと言えます。

顧客ロイヤルティ

顧客が自社を信頼して愛着を持ち購買意欲も高い状態を顧客ロイヤルティといいます。ブランド戦略をあらかじめ練り、長いスパンで顧客に提供すべき価値や抱いて欲しいイメージを定めることで、顧客ロイヤルティを獲得できます。
消費者は常に競合他社との比較を行っていますが、ブランドの価値が強く認識されれば消費者は迷うことなく選択できます。
また、リピート率や顧客単価の向上だけでなく、顧客が一定期間または生涯にわたって同じブランドを購入する額(LTV)の上昇が期待できます。

価格競争を回避

ブランド戦略が上手くいけば価格競争を回避できます。
他社との競争で頻繁に起こるのは技術競争や価格競争です。例えば、PCなどの電気製品は製品のパフォーマンスや機能の種類、そして価格が主に争われます。技術や価格は消費者にとっては、それ自体が価値になるわけではなく、消費者が抱えている問題への解決やブランドへの安心感、信頼感が価値につながり、単純な価格競争を回避できるようになります。

ブランド戦略策定の手順

step1 分析する
step2 ターゲットを明確にする
step3 ブランドアイデンティティを明確にする
step4 ブランドイメージの可視化、宣伝

今回はstep1の分析をする際にもっともよく使われている分析フレームワークをご紹介します。その3つのフレームワークとは「PEST分析」「3C分析」「SWOT分析」です。

PEST分析

PEST分析とは、主に経営戦略やマーケティングを行う際に使用し、政治、経済、社会、技術的といった社会全体など、自社を取り巻くマクロ環境(外部環境)が、現在または将来にどのような影響を与えるか、把握・予測するためのもの手法です。
PEST分析はふわっとしていて、目先の売り上げや利益につながりにくいため、つい疎かにされてしまうことがありますが、行っていないといつの間にか時代の流れに取り残されてしまい、大企業でも破綻する恐れがある重要なフレームワークです。
具体的には、下記の4つの要因から、環境の変化や影響を把握・分析します。

PEST分析

●政治的要因(Politics)
 法律改正や政権交代、外交状況など
●経済的環境要因(Economic)
 景気動向やインフレ・デフレ、金融指標など
●社会的環境要因(Social)
 人口動態や文化の変化など
●技術的環境要因(Technological)
 新技術の進捗や投資状況、M&Aなど

PEST分析の事例

リユース業界CtoC-EC市場

Politics
(政治的要因)
・働き方改革奨励に伴う給与の上昇。
・緊急事態宣言時の時短営業。
・消費税増における消費の変化。
Economy
(経済的要因)
・平成27年度には約3兆1千億円の市場規模になる。
・リユース市場の中でCtoCの物販ECの市場規模は2019年時点で約1.7兆円に到達。
Society
(社会的要因)
・新型コロナウイルス感染症拡大によるライト層(初心者)の利用が増えた。
・スマートフォン利用者の増加。
・CtoCマーケットユーザーが急増する。
・採用難や離職問題の問題でオペレーション効率が下がり、販売比率をあげられない。
・リサイクルショップが倒産急増。
Technology
(技術的要因)
・スマートフォンの普及により、アプリ化するサービスが増えた。

 

3C分析

次に着手するのが3C分析です。3C分析は自社、競合、顧客のそれぞれをリサーチし、強みと弱みを特定し、成功要因を見つけ出すフレームワークです。

3C分析

●顧客、市場(Customer)
 顧客の購買意志や能力、市場の成長性など
●競合(Competitor)
 競争の状況、競合他社との差異化など
●自社(Company)
 自社の持つ経営資源や現状の強み、弱みなど
外部要因である市場と競合、そして内部要因である自社を照らし合わせると、何が自社の強みと弱みなのかが分かるようになります。

3C分析の事例

メルカリ

Customer
(顧客)
・CtoCマーケットユーザーが急増する。
・オークションは購入までの流れや振り込みなどのやりとりが手間に感じている。
・在宅時間が増える中、自宅で簡単に出品・購入ができる「フリマアプリ」の需要が高まっている。
・自宅の情報を開示するのに抵抗がある。
Competitor
(競合)
・売買成立手数料は商品代金の3.5%〜。
・出品手数料:無料
・自社ポイントを使用できる。
Company
(自社)
・出品手数料:無料
・累計出品数:10億品以上
・シンプルな操作で出品することが可能で手軽さが売り
・お金のやり取りはすべてメルカリが仲介。
・「らくらくメルカリ便」「ゆうゆうメルカリ便」など独自の配送方法は万が一の場合の補償も手厚い。
・出品者・購入者ともに住所や実名を明かす必要がない匿名配送も可能。
・定期的にオフラインで利用者を募集し、ヒアリングとユーザビリティテストを行い、ユーザビリティの改善をしています。

SWOT分析

最後はSWOT分析という企業や事業の現状分析をするときなどに使うフレームワークです。PEST分析は外部環境を詳細に分析するフレームワークに対し、SWOT分析は企業や事業がおかれているビジネス環境(内部環境と外部環境)、または特殊の状況下において、自社の強みの活かし方や改善点を見つけられます。
また、既に3C分析で得た強みと弱みを書きしるし、PEST分析で把握した外部環境を機会・脅威として書くことで詳細な情報を記すことができ、具体的に分析することが可能です。

PEST分析

以下「強み」「弱み」という内部要因と「機会」「脅威」という外部要因とを見比べることが必要になります。

●強み(Strength)
 自社の武器など
●弱み(Weakness)
 自社の苦手とすること
●機会(Opportunity)
 自社のチャンスとなる外部要因など
●脅威(Threat)
 自社を脅かす外部要因

SWOT分析の事例

メルカリ

Strength
(強み)
・お金のやり取りはすべてメルカリが仲介するため、料金トラブルがない。
・「らくらくメルカリ便」「ゆうゆうメルカリ便」「匿名配 送」などメルカリ独自の配送方法がある。
・利用ユーザーが多く、比較的に売れるのが早い。
・操作がシンプルで使いやすく、ユーザビリティを大事にしている。
Weakness
(弱み)
・手数料が他社より高く、出品者にとっては負担に感じる
Opportunity
(機会)
・手間かけずにで出品したい。
・家の不用品を処分したい。
・自身の住所や個人情報を開示したくない。
Threat
(脅威)
・他社は手数料が安く、販売金額が高い商品は競合他社に流れる可能性がある。
・新規参入する企業が増え、競争が激しくなり、平凡なフリマアプリは淘汰されつつあります。
・手軽に使える反面、現金の出品が相次ぎトラブルになりやすく、常に対策をこうじていく必要がある。

まとめ

今回は近年利用者が急増しているフリマアプリ「メルカリ」のビジネスモデルをPEST分析と3C分析、SWOT分析の3種類のフレームワークを併用して分析しました。その結果、メルカリは徹底したユーザービリティへの追求と自社独自のサービスを強化することで他社と差別化しされ、価格競争に負けないサービスブランドを作り上げていると改めてわかりました。また、ただ情報を集めるだけでなく、順序を守って作成することで、より俯瞰的に自社がいるべきポジショニングを把握でき、戦略を練ることができます。

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